ウイスキー基礎知識 第4回:世界の五大ウイスキー(後編)
さあ、なががったウイスキー基礎知識4回も後編、本当にラストです。
前編・中編の記事はこちら。
今回はジャパニーズウイスキーについて書いていきます。
それではやっていきましょう。
ジャパニーズ
さあついにきました、日本です。
日本のウイスキーが五大ウイスキーに入っていると知らない人も多いんじゃないでしょうか。
日本でウイスキーが誕生したのは20世紀に入ってからで、五大ウイスキーの中で最も遅いですが、その繊細な味わいと高い技術力が世界に認められ、今では数々の賞を取っています。
ジャパニーズはスコッチをお手本にしているので、製法や種類はスコッチと変わりません。
日本はメーカーごとに蒸留所を所有し、その中で複数銘柄を作り上げているので、メーカーごとの紹介とします。
①サントリー
所有蒸留所:山崎蒸留所、白州蒸留所等
日本で初めて本格的にウイスキーを作ったのは、サントリー創業の鳥井信治郎さんです。ですので、サントリーは日本のウイスキーの祖といえるでしょう。
1980年代以降、冷え込んだウイスキーの消費を回復させたのもサントリーのハイボール戦略であり、日本のウイスキーへの貢献は計り知れないものになっています。
代表銘柄:山崎、響、角瓶
そのサントリーの代表銘柄といえばまず山崎でしょう。
日本独自のミズナラの樽に入れた原酒も使われ、華やかで複雑な、これぞジャパニーズシングルモルトという味です。
響は日本のブレンデッドの頂点ともいえるウイスキーです。
「人と自然と響きあう」というコンセプトで作られたこのウイスキーは、香りが非常に華やかで、飲んでいてひっかかりがなく口に入っています。
角瓶は説明不要ですね。日本のウイスキーで唯一世界の消費量top20に入ってるらしいです。
②ニッカウイスキー(アサヒビール)
所有蒸留所:宮城峡蒸留所・余市蒸留所等
日本のウイスキーの立役者は鳥井さんのほかにもう一人います。その竹鶴政孝さんが作ったのがこのニッカウイスキーです。
現在はアサヒビールの子会社になっています。
竹鶴さんは実際にスコットランドの蒸留所をめぐり、実習などもして、そこで学んだことを一冊のノート(通称竹鶴ノート)に書き記し、日本にもたらします。
その竹鶴さんが作ったニッカウイスキーは、今でもスコットランド伝統の製法を守り続けています。
代表銘柄:ブラックニッカ・竹鶴
まずニッカと聞いて思い浮かぶのはブラックニッカでしょう。
あんまりストレートで飲むお酒ではないイメージですが、ブラックニッカ誕生60thを記念して作られた「ブレンダーズスピリット」という特別版は結構おいしいです。
あとは創業者の名を冠した竹鶴ですね。
これは複数蒸留所のモルト原酒だけをブレンドした「ヴァテッドモルト(ピュアモルト)」という種類になります。キャラクターの違う複数の原酒を絶妙にブレンドした、ブレンダーの技術が光る逸品です。
③キリンビール
所有蒸留所:富士御殿場蒸留所
上記2つに比べて製造を開始したのは遅いですが、世界的にも稀有な特徴を多く有しているのがキリンの御殿場蒸留所です。
ここだけでモルト・グレーン両方のウイスキーを生産しており、生産・貯蔵・ボトリングまでできる世界でも珍しい複合施設です。
また、普通グレーンウイスキーはあくまで下地で重要視されないのですが、ここではこだわり抜き、3種類のグレーンウイスキーを作り分けています。
代表銘柄:富士山麓
これ個人的にコスパめっちゃいいと思います。味わいは和製バーボンといった感じで、甘めに仕上がっています。
蒸留所限定のシグニチャーブレンドというハイグレード品が一般に出回るみたいなので、そっちも要チェックですね。
④ベンチャーウイスキー
所有蒸留所:秩父蒸留所
2008年から蒸留を開始した、新進気鋭の企業です。
創業者である肥土伊知郎が、彼の祖父の作っていた原酒を瓶詰めした「イチローズモルト」は2007年にベストジャパニーズモルトに選ばれ、業界に衝撃を与えました。
以降日本のクラフト蒸留所の最前線を走り続けています。
秩父蒸留所は一回の仕込みで1樽分程度しかお酒ができないためただでさえ供給が少ないのに、昨今の需要過多でめちゃめちゃ高いです。それでも飲む価値はあります。
蒸留所が小さいならではの実験的な試みもしていて、ワイン樽、ビール樽などで寝かせたウイスキーを販売しています。
終わりに
世界の五大ウイスキー後半編、いかがだったでしょうか。
ジャパニーズは書くことが多くなってしまい急遽一つの記事にしました。
一つの地域の中で個性の違いを見つけるのも面白いですし、国ごとに共通した個性を見つけるのも別の面白さがあります。
3回4回とうんちく語りの回はこれで終わりです。うんざりしてた方も戻ってきてね。
次回はウイスキーはどうやって飲むものなのか、ウイスキーの飲み方についてです。
お楽しみに。
ウイスキー基礎知識 第4回:世界の五大ウイスキー(中編)
今回はスコッチとジャパニーズ以外の地域を扱います。
スコッチに関してはこちらを。
それではやっていきましょう。
①アイリッシュ
アイルランドは、イギリスと聞くとイメージされるグレートブリテン島の西にある島で、北側はイギリスの一地域、南側がアイルランドになっています。
アイルランドはウイスキー発祥の地であり、かつては生産量一位を誇っていましたが、1920年代、アメリカへの輸出が途絶えその後衰退の一途をたどります。
ただ、現在は世界的なウイスキーブームとともに再評価され、復活してきています。
アイリッシュには一般的なシングルモルト、ブレンデッドウイスキーのほかに、「シングルポットスチルウイスキー」と呼ばれる伝統的なウイスキーがあります。
これは大麦麦芽に未発芽大麦、その他の穀物を加え、3回蒸留して作り出されるウイスキーです。
アイリッシュの特徴でもある、独特の油っぽさと穏やかな味わいはこの作り方から生まれるんですね。
代表銘柄:ジェムソン、ブッシュミルズ、レッドブレスト
ジェムソンは世界で一番売れているアイリッシュウイスキーです。飲みやすく、カクテルの素材や割り材にしてもOK。これはブレンデッドです。
ブッシュミルズは世界最古と名高いブッシュミルズ蒸留所で作られるシングルモルトです。
レッドブレストはシングルポットスチルウイスキーで、アイリッシュの中では重めの酒質と味わいです。
②アメリカン
これは説明不要ですね、アメリカのウイスキーです。もともとはスコットランドやアイルランドの移民が始めたウイスキーですが、禁酒法時代などを経て独自の発展をしています。
種類としては、最もポピュラーなバーボンと、現在ジャックダニエルが単一銘柄となっているテネシーウイスキーです。
某探偵マンガに出てくるバーボンさんのバーボンは、アメリカのウイスキーの一種類だったんですね。
バーボンは半分以上トウモロコシを原料にしなければならなかったり、新樽の内側を焦がして使うなどの特徴があります。味の特徴としては、トウモロコシ由来の甘さが挙げられるでしょうか。
テネシーウイスキーは、テネシー州で作られるウイスキーです。といっても原料や製法はほぼバーボンと同じです。
違うのは、チャコールメローイングという部分。サトウカエデの炭の層にお酒をくぐらせ、ろ過します。
これをすることでやわらかい口当たりになるんだとか。
ちなみに豆知識ですが、世界で一番売れているアメリカンウイスキーはジャックダニエルです。なのでバーボンではないんですね。
ジムビームとか有名だけど紹介するほどのものじゃない気がするので、ストレートで飲めるものを代表にします。
代表銘柄:メーカーズマーク、ワイルドターキー
メーカーズマークは赤い封蝋が目印のバーボンです。小麦を原料に使っているのが特徴。
味は優しい甘さで、はちみつみたいな味がします。
2000円強で買えるのでコスパも最高です、結構置いてあるの見ます。
ワイルドターキーはバーボンらしいバーボンです。骨太で荒々しく、樽の香りが強いのが特徴です。
③カナディアン
カナディアンはカナダで作られるウイスキーです。
アメリカ禁酒法時代に、カナダはアメリカへの輸出を禁止せず、大量のウイスキーを製造・密輸することで莫大な富を築くと共に、アメリカ市場に浸透していきました。
種類としては、「フレーバリングウイスキー」というライ麦・トウモロコシ、ライ麦麦芽などを用いたものと、「ベースウイスキー」というトウモロコシ原料のものがありますが、ほとんどの製品が両者を混合した「カナディアンブレンデッドウイスキー」となります。
味の特徴としては、ライ麦由来のスパイシーさや、すべての蒸留器が連続式であるため、ライトな酒質であることが挙げられます。
代表銘柄:カナディアンクラブ
カナディアンウイスキーで最大の売り上げを誇るカナディアンクラブ。というか日本ではこれ以外なかなかお目にかかれません。
C.C.の名で親しまれることもあり、カクテルベースにもよく使われています。
某アニメの緑髪のピザ女じゃないです。僕はピザ女大好きですけど。
終わりに
ところ変わればということで、国ごとに様々な個性があることがおわかりいただけたましたでしょうか。
次回はいよいよ後編、ジャパニーズウイスキーについて扱います。