レディ オブ ザ グレン ブルイックラディ 1991-2018
甘美で綺麗なラディでした。
LADY of the GLEN
BRUICHLADDICH Distillery
Isray's Singlemalt
Aged 27 years
1991-2018
51.3% 700ml
レビュー
香り:やや酸味を伴う麦の香り、カルピス、レモンヨーグルト。アプリコット。洋菓子を思わせる甘さに、上品なピートがほんのりと添えられている。
味:口に含むと香りよりもアタックはつよい。コクのある麦感とフルーティな甘味が広がる。香りと同様にフルーツ+洋菓子感、レモンタルト。生クリーム、メレンゲのようなクリーミーさ。徐々に塩とピートが後を引き締め、余韻は長く、あたたかく、ほどよくビター。
感想
レディ オブ ザ グレンは元銀行員であったグレゴール・ハンナがスコットランドのファイフに2012年に設立した新進気鋭のインディペンデントボトラー「ハンナ ウイスキー マーチャンツ」のブランドです。このブランド名はグレゴールが好きなスコットランドの物語「ザ グリーン レディ」に登場するヒロインのキャラクターに由来します。
スコットランドのボトラー、レディオブザグレンから、91VTのホグズヘッドの熟成です。
長熟ラディは実は飲むの初めてなのですが、こんなにうまいと思っていなかったです。
閉鎖前の原酒はこんな感じだったのですね。フルーティさにピートと潮気が下支えする、好みドストライクなボトルでした。
某酒屋さんで定価30%offで売ってたのを逃したのは後悔しかありません。まあ飲む前だったので仕方ないですね、お酒との出会いは一期一会なのです…
(とか言いながら、マスター曰く92がよいVTらしいので、92のおすすめをフォロワーに教えてもらって買ったのは内緒です)
ブルイックラディ蒸留所とは
ブルイックラディ蒸留所はアイラ島の中でもかなり西に位置します。ちょうどボウモア蒸留所の対岸といったところでしょうか。アイラ島自体がスコットランドの西に位置するので、キルホーマン蒸留所ができるまで、ブルイックラディ蒸留所がスコットランドで一番西の蒸留所でした。
ブルイックラディ蒸留所の操業は1881年と古いものの、1994年に閉鎖されてしまいます。そんな中、元ボウモアのマスターディスティラーであるジム・マッキューワン・ボトラーズのマーレイマグダット社が中心となり、ブルイックラディ蒸留会社を設立し、蒸留所を買い取ります。そして2001年の春、めでたくオープンとなりました。
このような背景から、数少ない独立資本の蒸留所の一つであり、さまざまな面白い試みが行われています。
オフィシャルのラインナップはライトピートの「ブルイックラディ」、ミディアムピートの「ポートシャーロット」、そして(ウルトラ)ヘビーリーピーテッドの「オクトモア」をリリースしています。ピートの焚き具合でラインナップを分けるのは珍しい気がします。
また、最大の特徴として、テロワール*1に非常に強いこだわりを持っていることが挙げられます。
スコットランド本土だけでなく、アイラ島の農家とも契約を結び大麦を仕入れ、熟成~ボトリングに至るまでをすべてアイラ島で行っています。(他のアイラの大手蒸留所は、熟成庫がスコットランド本土にあったりします)。
こうすることで、アイラ島に根ざした味を作り、また島に雇用をもたらそうとの狙いがあるようです。
ブルイックラディ蒸留所が作っているジン「ボタニスト」も、ボタニカルの大半にアイラ島の植物を用いており、このことからもテロワールへのこだわりが見えると思います。
また、古代品種の試験的な栽培を行っていたり、将来的にフロアモルティングの構想があったりと、そのユニークさは留まることを知りません。
最後に
蒸留所のこだわりがすごいのでつい長くなってしまいました。
現行オフィシャルは比較的短熟ながら、どれもそれを感じさせないとても良い作りになっていると思います。再オープン後の原酒がそろそろ18~19年になり、中~長熟がボトラーズからリリースされ始めており、今後のリリースも目が離せません。
前回のキルケランもそうでしたが、こういった2000年以降の原酒が美味しい所があると、ウイスキー業界の先行きは明るいなとうれしくなります。
皆さんもぜひ飲んでみてください。それではまた。
キルケラン 12年
今一番期待している蒸留所です。
Mitchel's GLENGYLE Distillery
KILKERRAN
Campbeltown's single malt
Aged 12 years
Now on Sale
46% 700ml
レビュー
香り:乾いた土のようなほろ苦さと麦芽の甘さ。クッキー、レモンとホワイトペッパーのさわやかさ、潮気。
味:少し粘性のある口当たり。麦芽主体の風味に、はちみつとレモンのアクセント。香りでも感じたほろ苦さ・乾いたスモークが徐々に強くなり、潮気とともに余韻に残る。加水すると麦芽の甘味が増す。
グレンガイル蒸留所とは
キャンベルタウンにあるグレンガイル蒸留所は、創業1872年と歴史のある蒸留所です。
しかし、1925年生産停止と同時に閉鎖されて以来、本来の姿を取り戻すことはありませんでした…
そんな中、スプリングバンク蒸留所の経営者、ヘドレー・ライト氏が蒸留所復活を試み、スプリングバンク資本の元、2004年に蒸留が開始されます。(前にあった蒸留所とは別物となるようで、再開ではなく開始です)
元々蒸留所が近かったことや、仕込みに使う麦芽や水が同じことから姉妹蒸留所のような関係になっています。
再稼働当初はスプリングバンクのスタッフが稼働させていたようですが、今は完全に独立しているようです。
ちなみに、スプリングバンク資本によるグレンガイル再建にはいろいろと裏があるようで…
そのあたりが知りたい方は
Twitterのフォロワーさんのこちらの記事をご参考ください。
多分日本語で一番キルケランの情報が書いてある記事だと思います。
スプリングバンク蒸留所って何!?って方は
こちらをご覧ください。
感想
今僕が一番注目している、グレンガイル蒸留所。
スプリングバンクが年々高騰する中、キャンベルタウンモルトに求めるものがよいバランスで備わっているこの蒸留所の評価が上がるのは必然とさえ言えます。
ちなみにこのキルケラン12年はこの美味さでアンダー5000円。
5000円以内のボトルで一番のおすすめなので見かけたらぜひ飲んでみてください。
少し癖はありますが、加水すると麦芽の甘味が増し、程よいピートで水割りでもハイボールでもなんでも使えるデイリーユースの申し子。僕もあと数本家に欲しいと思っています。
UK向け15周年記念ボトルもとても美味しかったらしいですし(どこかで飲みたい…)、今後の展開がとても楽しみです。
なんでキルケランって名前なの?
最後にオマケというか豆知識。
グレンガイルという名前は同じキャンベルタウンの蒸留所「グレンスコシア蒸留所」に商標登録されており使えなかったみたいです。
キルケランというのはキャンベルタウンの昔の名の由来にもなっている聖キエランが由来となっています。
いろいろ秘められたエピソードもあって面白いですね。これからのこの蒸留所にも注目していこうと思います。
それではまた。